02/「説明」とは何か

現代政治分析入門1

鈴木淳平

駒澤大学法学部政治学科

2026-04-21

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今日の目次

  1. はじめに
  2. 二つの議論
  3. 因果関係と説明
  4. 仮説構築:理論編
  5. 仮説構築:実践編
  6. まとめ

はじめに

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先週のRPより

回答者281/345

アイスブレイクが楽しかった。初対面の他者と意見交換をする機会があまりないため貴重な体験だった。今まで自分を人見知りだと思っていたが、意外といけるもので、先入観を持たず挑戦が重要だと学んだ。

周りの人のことを知れたので分からない事があったら協力して勉強していきたいです。特に、独立変数や従属変数などといった数学的な分野は得意ではないので力を入れようと思います。

普段ニュースなどで見る政治の問題について、事実とコメンテーターの意見が混同されていると感じていたが、「規範的議論」や「経験的議論」といった用語があることを学んだ。

本日の目的と到達目標

目的

因果関係を推論する営為としての「説明」についての枠組みを身につける。因果関係が満たすべき3要件を学び、自分で因果関係に関する推論を組み立てられることを目指す。

到達目標

  1. 規範的議論と経験的議論とはそれぞれ何かを説明できる。
  2. 因果関係が満たすべき3条件を列挙できる。
  3. 政治その他社会現象の因果関係について、自分で簡単な仮説を構築することができる。

本日の授業の位置付け

二つの議論

二つの種類の議論

規範的議論(normative discussion)

「何が正しい/望ましいのか」をめぐる議論

  • 「べき」論価値判断を伴う
    • 例:人を殺すことはいけない

経験的議論(empirical discussion)

「何が、なぜ起こっているのか」をめぐる議論

  • 「である」論→価値判断を伴わず、あくまで事実のみ
    • 例:あの人は人を殺した

政治をめぐる議論の実際

日常生活、特に政治をめぐる議論では両者の区別が意識されず

例:「少子化が進んでいるのは問題だ。子ども手当を手厚くすべきだ。」

  • 少子化の進行⋯経験(事実認識)
  • 少子化は問題⋯規範(価値判断)
  • 子育て支援を手厚くすべき⋯規範(政策提言)
  • 子ども手当→少子化の解決⋯経験(因果推論)

→規範的議論は経験的議論が前提

  • 「少子化の進行」「子ども手当→少子化の解決」という前提は正しいのか?→データや調査等で確認

因果推論/説明の世界へ

Think-pair-share (-10分)

目的

政治をめぐる規範/経験的議論を区別できるようになる

  1. Think (2分)
    • 政治をめぐる言説のうち①『~すべきだ/望ましい』という形の主張(規範的議論)②『~である/~の結果~が起きている』という形の主張(経験的議論)をそれぞれ1つずつ考える
  2. Pair (3分)⋯ペアで共有、なぜ規範的/経験的であると言えるのかを整理
  3. Share (3分)⋯WebClassチャット上で全体に共有

政治学と二つの議論

政治学にはそれぞれに対応した分野が存在

政治哲学/政治理論(political philosophy/theory)

政治を規範的観点から研究する分野

  • 例:プラトン、ロールズ⋯
  • 正しい政治とは何か、格差はなぜいけないのか⋯

政治科学/実証政治学([empirical] political science)

政治を経験的観点から研究する分野

  • 例:比較政治学、政治過程論、国際関係論、行政学⋯
  • 政治制度の違いとその影響、戦争の原因、官僚機構の働き⋯

→本授業では後者(政治科学/実証政治学)の方法論を学ぶ

因果関係と説明

実証政治学の二つの目的

記述(description)

どうなっているのか」を明らかにすること

  • 内閣支持率、女性議員比率、汚職の程度

説明(explanation)

なぜ」を明らかにすること

  • 高市政権の人気はなぜ?、日本で女性議員比率が低いのはなぜ?、汚職が少ないのはなぜ?

因果関係

説明とは因果関係(causality)を問う作業

  • 原因⋯独立変数(independent variable: IV)
  • 結果⋯従属変数(dependent variable: DV)

因果関係の3条件

  1. 独立/従属変数の共変関係
  2. 原因の時間的先行
  3. 他の変数の統制

独立/従属変数の共変関係

独立変数と従属変数が連動して変化している必要

因果関係が成立する上での大前提

しかし、確かめられていないことが多い

例:「投票率が低いのは政治不信のせい」

  • 政治不信の高まり/低下と投票率の低下/上昇

→多くの場合観測されず

原因の時間的先行

独立変数の変化は、従属変数の変化の前に起こっている必要

共変関係と因果関係を区別する条件の一つ

例:「体重が重い人ほど所得も高い」

  • 体重増加と所得上昇どちらが先か→どちらが原因かわからない

→データからは判別できず、理論から考える必要

他の変数の統制

他の変数の影響を取り除いても、共変関係が成立する必要

共変関係と因果関係を区別するもう一つの条件

例:「身長が高いほど所得も高い」

  • 身長は所得に先立ってはいる
  • 親の所得が両方に影響→見せかけの相関

交絡変数(confounding variable)

独立変数および従属変数両方に影響する変数

cf. 因果推論の根本問題 (第8回)

仮説構築:理論編

仮説とその構築

仮説(hypothesis)

真偽はさておき、何らかの現象を説明する命題

「~ではないか?」という推測→後で検証される必要

仮説構築の流れ

  1. 「なぜ?」に対して「~だから」と推測
  2. 何が独立/従属変数(原因/結果)なのかを特定
  3. 原因と結果を結ぶメカニズムを特定=フローチャートの作成
  4. 因果関係の3条件の確認

福元・堀内の例

  1. 「なぜ日本の投票率は→地方>国政なのか」→「選挙制度が違うから」

  2. 独立変数:選挙制度、従属変数:投票率

  3. 因果フローチャートの作成

    • 選挙制度→一票の価値→各人の投票意欲→投票率
  4. 因果関係の3条件の確認

    原因 結果
    地方 選挙区制 投票率
    国政 選挙区制 投票率
    • 共変関係
    • 時間的先行:選挙制度は法定なので先
    • 他の変数の統制:同じ自治体ならば選挙制度以外は条件同じ

仮説構築:実践編

仮説構築実践 (20-25分)

  • ソロワーク① (8分)…一人でワークシート上で次の作業
    • ワークシート上で政治/社会現象についての仮説を構築
    • その仮説における独立変数(原因)/従属変数(結果) を特定
    • 独立/従属変数を結ぶフローチャートを描く
  • ソロワーク② (8分)…ペアを組みワークシートを交換し相手の仮説について以下を確認
    • 共変関係⋯2×2の表は書けるか
    • 時間的先行⋯逆向きの可能性の有無
    • 他の変数の統制⋯交絡変数の有無
  • ペアワーク (3分)…ワークシートを相互に見ながらフィードバック

まとめ

本日の目的と到達目標

目的

因果関係を推論する営為としての「説明」についての枠組みを身につける。因果関係が満たすべき3要件を学び、自分で因果関係に関する推論を組み立てられることを目指す。

到達目標

  1. 規範的議論と経験的議論とはそれぞれ何かを説明できる。
  2. 因果関係が満たすべき3条件を列挙できる。
  3. 政治その他社会現象の因果関係について、自分で簡単な仮説を構築することができる。

次回までに

事後学習

  • 授業資料を見直し、目標到達をセルフチェック
  • WebClass 上でのリアクションペーパー入力(金曜日まで)
    • 「仮説構築:実践編」のワークで作った仮説も入力(通常の感想欄とは別)

事前学習

  • 教科書(久米2章)を読み、WebClass 上でのチェックフォーム記入