03/反証可能性

現代政治分析入門1

鈴木淳平

駒澤大学法学部政治学科

2026-04-28

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今日の目次

  1. はじめに
  2. 反証可能性
  3. コミュニティ権力論争
  4. 政治における文化論
  5. 仮説構築ワーク
  6. まとめ

はじめに

先週のRPより

教科書を読んできて、うまく理解できず講義が不安でしたが、教科書の読んできたことの復習とそれの実践だったので、もう一度説明されることによってうまく理解できました。また講義後に読み直すと理解が深まりました

独立変数や従属変数や共変関係などの考え方が数学の相関関係の考え方と似ていると感じた、共変関係がイマイチ理解できていないので次回の授業でもう一回説明してほしいです。

先週のRPより(続)

交絡変数が存在するというのは、「Aが起きる事象はB以外にCがある。」という解釈で正しいですか?

交絡変数とは、独立変数と従属変数だと仮定した二つ両方と、因果関係を持っているものでしょうか。では交絡変数が実は独立変数で、二つが従属変数になるのでしょうか。

少子化は教育費が高いことが原因で進んでいると思いました。ただ、収入や働き方などの交絡変数も関係している気がして難しいです。交絡変数はどこまで考えればよいのでしょうか。

他の変数を統制するとあるが、対照実験(コントロール実験)をするということなのか。

本日の目的と到達目標

目的

科学の条件としての「反証可能性」概念を学び、政治に関する巷説の科学性を判別できるようになる。また、反証可能性のある議論を自分で作れるようになることを目指す。

到達目標

  1. 科学の条件としての反証可能性を説明できる。
  2. ハンターとダールの間で繰り広げられたコミュニティ権力論争の内容を説明できる。
  3. 反証可能性の見地から、政治現象に関する文化論の問題を指摘できる。
  4. 政治現象に関する反証可能な仮説を構築できる。

本日の授業の位置付け

反証可能性

復習:実証政治学の二つの目的と因果

記述(description)

どうなっているのか」を明らかにすること

  • 内閣支持率、女性議員比率、汚職の程度

説明(explanation)

なぜ」を明らかにすること

  • 高市政権の人気はなぜ?、日本で女性議員比率が低いのはなぜ?、汚職が少ないのはなぜ?→因果関係をめぐる問いに答える

因果関係の3条件

  1. 独立/従属変数の共変関係
  2. 原因の時間的先行
  3. 他の変数の統制

科学の条件

再現可能性 (replicability)

同じ手順を踏めば、他人でも同様の結果や結論を得られること

  • 自身の記述/説明の検証方法を記録・公開する必要
  • 実験ノート、レプリケーションファイル…

反証可能性 (falsifiability)

ある仮説や理論が実験やデータによって「誤りである」と言える可能性を持つこと

火星の動きの例

反証を可能にする

例:「あの人が不幸なのは信仰心が足りないからだ」

  • 変数である不幸/信仰心という概念が抽象的
  • 抽象性ゆえに測定も比較も不能

概念を具体化することで反証可能にできる

例:「教会に週1回以上通っている人はそうでない人と比べて離婚率が低い」

  • 独立変数:信仰心→教会に行く頻度
  • 従属変数:不幸→離婚

クイズ

次の主張それぞれは反証可能かどうか考えてください。

  1. 朝食を毎日食べると学校の成績が良くなる。
  2. 成功するためには誰よりも努力することが必要だ。
  3. 民主主義国家は戦争しない。
  4. SNSにハマると頭が悪くなる。
  5. 政治家はみな最終的には自分の利益しか考えていない。
  6. 射手座の人は金持ちになりやすい。

コミュニティ権力論争

コミュニティ権力論争

コミュニティ(地域社会や都市)を牛耳るエリートは存在するか?

1950〜60年代にかけてアメリカの政治学で流行

  • 戦後経済復興と冷戦による軍拡
  • アイゼンハワー大統領退任演説(1961年)…軍産複合体に言及

エリート論「存在する」

  • フロイド・ハンター
  • ライト・ミルズ…

多元主義論「存在しない」

  • ロバート・ダール
  • ネルソン・ポルスビー…

エリート論

ハンター『コミュニティの権力構造』1

  • ジョージア州アトランタ2での調査
  • 評判法による検証
    • 「この街で影響力があるのは誰ですか」と尋ねる
    • 名前が上がった人に同じ質問を尋ねる
    • これを繰り返して最終的に到達した人がエリート

→「アトランタは一握りの経済エリートが支配」と結論

多元主義論

ダール『統治するのはだれか』1

  • コネチカット州ニューヘイブンでの調査
  • 争点法による検証
    • 市政で重要な争点を選ぶ
    • それぞれの争点で権力を行使した人を特定
    • 争点ごとに権力行使者は異なることを発見

→「すべてを支配するエリートはいない」と結論

ダールによるエリート論批判

  • 権力の定義/測定の問題
    • 「誰が本当に権力者なのか」ではなく、「誰が権力者だと思われているか」→権力の定義が明確ではない
    • 権力の定義「Aの働きかけがなければBは行わないであろうことを、AがBに行わせるかぎりにおいて、AはBに対して権力を持つ
      • 他者の利害に反してでも自分の利害に適う決定を成し遂げられた人が権力者→測定可能
  • 反証可能性の問題
    • 例:「犬神家が支配している」とされる村
    • 権力者の利害に反する決定がされたとの観察
    • 「本当の権力者がいるはず」→無限後退問題
    • cf. 陰謀論

政治における文化論

文化論とは

政治現象を文化的要因に着目して説明する議論

例:

  • 「日本では政権交代が起きにくいのは、安定を重んじる文化があるからだ」
  • 「中東で民主主義が定着しないのは、イスラム教の教えに原因がある」
  • 「北欧の手厚い福祉の背後には、相互扶助の精神がある」

Q. こうした文化論に反証可能性はあると思いますか?

文化論の問題

  1. ステレオタイプ…性別や年齢、国籍など特定の属性を共有する人々に対する思い込みや先入観
    • エスニックジョーク
    • 差別につながるなど、倫理的な問題
    • 集団内部の多様性や時期的な変化を見ず、不正確
  2. N=K問題…事例と同じ数だけの説明を作ってしまうこと
    • なんでも説明できるように見えて何も説明していない
    • 一般化を妨げるという問題
    • 再現可能性にも問題
  3. トートロジー (tautology)…ある事柄を同じ意味の言葉で説明すること。同語反復
    • 結局は何も説明できていない

仮説構築ワーク

ソロ+ペアワーク

目的:政治現象に関する反証可能な仮説を作れるようになる。

  1. ソロワーク①(4分)…ワークシート上で政治現象に関する仮説を1〜2個作る

    • その際、独立変数と従属変数を明確に
  2. ソロワーク②(4分)…ペアを作った上でワークシートを交換し相手の仮説について以下を確認

    • 相手の仮説がどのようになれば反証されたと言えるのか
    • もし反証できない場合、どうすれば反証可能になるのか
  3. ペアワーク(3分)…ワークシートを相互に見ながらフィードバック

  4. シェア(1-2分)…全体にシェア(WebClassチャット

まとめ

本日の目的と到達目標

目的

科学の条件としての「反証可能性」概念を学び、政治に関する巷説の科学性を判別できるようになるとともに、自ら科学的な因果推論を組み立てられることを目指す。

到達目標

  1. 科学の条件としての反証可能性を説明できる。
  2. ハンターとダールの間で繰り広げられたコミュニティ権力論争の内容を説明できる。
  3. 反証可能性の見地から、政治現象に関する文化論の問題を指摘できる。
  4. 政治現象に関する反証可能な仮説を構築できる。

次回までに

事後学習

  • 授業資料を見直し、目標到達をセルフチェック
  • WebClass 上でのリアクションペーパー入力(金曜日まで)

事前学習

  • 教科書(久米3章)を読み、WebClass 上でのチェックフォーム記入