07/原因の時間的先行

現代政治分析入門1

鈴木淳平

駒澤大学法学部政治学科

2026-06-02

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今日の目次

  1. はじめに
  2. 共変関係と因果関係
  3. 内生性
  4. 同時性
  5. 同時性への対処
  6. まとめ

はじめに

先週のRPより

TBD

本日の目的と到達目標

目的

因果関係が満たすべき要件の1つである「原因の時間的先行」について改めて考える。「内生性」をキーワードに、因果関係と相関関係の違いを理解するとともに、内生性の原因の一つとして特に「同時性」の問題に焦点を当てる。巷に溢れる言説に同時性の問題が発生しているかどうかを吟味し、その検証方法を考案する能力を身につける。

到達目標

  1. 因果関係と共変関係の違いを説明できる。
  2. 内生性が生じる理由を2つ以上列挙できる。
  3. 同時性とはどのような問題かを説明できる。
  4. 因果推論を伴う言説について、同時性の問題が生じているか否かを判別できる。
  5. 同時性の問題を回避して因果関係の検証を行う方法を考案できる。

本日の授業の位置付け

共変関係と因果関係

復習:3条件と共変関係

因果関係の3条件

  1. 共変関係
  2. 原因の時間的先行
  3. 他の変数の統制

共変関係

独立変数の値の変化と従属変数の値の変化が同時に生じていること

  • 値の変化」が生じている必要
    • 例:洋画を見る時間→TOEICの成績上昇

質問

駒大生100人へのアンケート調査から、「洋画を見る時間が長い人ほどTOEICの点数が高い」という関係が観測されました。

この結果から、「TOEICの点数を上げるためには洋画を見るべきだ」と結論づけてもよいでしょうか。

WebClassアンケートで回答してください。

内生性

内生性 (endogeneity)

共変関係が観察されたとしても、本当の因果効果が歪んでしまう問題

  • 計量経済学では「独立変数と誤差項との共変関係が生じている状態」

因果効果 (causal effects)

原因が結果にもたらす効果

  • 例:洋画視聴時間とTOEICの点数
    • 本当の因果効果は1時間→20点
      • 過大評価…1時間→40点
      • 過小評価…1時間→10点

内生性の原因

  • 同時性…原因の時間的先行がない(今回)
  • 欠落変数…他の変数が統制されていない(次回)
  • 観測誤差…独立変数の測定にずれ(第5回)

Q. 観測誤差については第5回に学びました。2つの種類があったと思いますが、それは何と何ですか?

洋画視聴とTOEICの点数の関係

同時性

同時性 (simultaneity)

独立変数が少なくとも部分的に従属変数の影響を受けていること

  • 逆の因果関係の可能性=結果だと思われているものが実は原因

教科書の例:

  • 女性の労働参加と出生率
    • 子供が生まれたら養育費を稼ごうとする
  • 住宅面積と出生率
    • 子供が生まれたら広い家に引っ越す
  • ビジネス書のハロー効果
    • 成功したからすべて秘訣に見える

クイズ

次の因果推論で、同時性が生じていると思われるものを全て選んでください。(WebClassで回答

  1. 警察官が増えることで犯罪率が低下する。
  2. 台風の発生回数が増えると、その年の農産物の価格が上昇する。
  3. プラスチックごみの増加により、海洋の生態系が破壊されている。
  4. 経済発展が進むほど、その国の民主化は促進される。
  5. 所得水準が高い国ほど、教育水準も高くなる。
  6. 早生まれの子どもは他の同学年の子どもよりもテストの成績が低い。

同時性への対処

Think-pair-share (-10分)

「警察官が増えることで犯罪率が低下する」という推論には同時性があります。

同時性の問題を発生させず、警察官が犯罪率に与える因果効果を推定するためにはどうすればいいと思いますか。

  1. Think (1分)…1人で考える
  2. Pair (2-3分)…ペアで考えたことを共有
  3. Share (2-3分)…全体に共有(WebClassチャット

同時性への対処方法

  • 理論的検討…原因が先行していると論理上確実に言えるような仮説を作る
    • 「台風発生→農産物価格」など、原因が自然現象
    • 「風が吹けば桶屋が儲かる」問題
  • ラグを取る過去の独立変数と現在の従属変数の共変関係を確認
    • 一年前の住居面積と今年の出生率
    • 一年前の出生率が交絡変数となる可能性

同時性への対処方法(詳細は次回)

  • 実験…独立変数を人為的に操作
    • ランダムに半分ずつ洋画を見せる/見せない→TOEICの点数
    • コストや倫理的課題
  • 統計的因果推論…観察データから実験に近い状況を利用
    • 少人数学級の教育効果→「クラスは40人以内」というイスラエルの制度
    • 実験に近い状況は見つけにくい

まとめ

本日の目的と到達目標

目的

因果関係が満たすべき要件の1つである「原因の時間的先行」について改めて考える。「内生性」をキーワードに、因果関係と相関関係の違いを理解するとともに、内生性の原因の一つとして特に「同時性」の問題に焦点を当てる。巷に溢れる言説に同時性の問題が発生しているかどうかを吟味し、その検証方法を考案する能力を身につける。

到達目標

  1. 因果関係と共変関係の違いを説明できる。
  2. 内生性が生じる理由を2つ以上列挙できる。
  3. 同時性とはどのような問題かを説明できる。
  4. 因果推論を伴う言説について、同時性の問題が生じているか否かを判別できる。
  5. 同時性の問題を回避して因果関係の検証を行う方法を考案できる。

次回までに

事後学習

  • 授業資料を見直し、目標到達をセルフチェック
  • WebClass 上でのリアクションペーパー入力(金曜日まで)

事前学習

  • 教科書(久米7章)を読み、WebClass 上でのチェックフォーム記入