12/現実と方法論

現代政治分析入門1

鈴木淳平

駒澤大学法学部政治学科

2026-07-07

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今日の目次

  1. はじめに
  2. 規範と経験
  3. 戦後日本政治学
  4. 政策提言の評価実践
  5. EBPMとその課題
  6. まとめ

はじめに

先週のRPより

TBD

本日の目的と到達目標

目的

これまで扱ってきた経験的議論の方法論が、実際の政治に関する規範的議論とどのような関係にあるのかを考える。戦後日本政治学の潮流を概観した後、具体的な政策提言について実証的な根拠の面から検討し、その効用と限界を理解する。

到達目標

  1. 経験的議論が規範的議論の前提になっているということを説明できる。
  2. 戦後政治学における啓蒙主義的な立場とレヴァイアサングループの間の論争を説明できる。
  3. 世間に流布する政策提言の実例を実証的な面から評価することができる
  4. 根拠の基づいた政策提言(EBPM)の課題を3つ挙げることができる。

本日の授業の位置付け

規範と経験

クイズ

以下の議論は規範的議論でしょうか、それとも経験的議論でしょうか

  1. 若者の投票率は高齢者の投票率よりも低い
  2. 政府は環境問題対策をもっと強化する必要がある
  3. 地方の過疎化を防ぐために更なる対策を行うべきだ
  4. SNSにより政治における合意形成が困難になっている

WebClassで回答

復習:二つの種類の議論

規範的議論(normative discussion)

「何が正しい/望ましいのか」をめぐる議論

  • 「べき」論価値判断を伴う
    • 例:人を殺すことはいけない

経験的議論(empirical discussion)

「何が、なぜ起こっているのか」をめぐる議論

  • 「である」論→価値判断を伴わず、あくまで事実のみ
    • 例:あの人は人を殺した

少子化対策の例

政策提言は規範的議論の一種

少子化が進んでいるのは問題だ。子ども手当を手厚くすべきだ。

  • 少子化は進んでいるのか?
  • 子ども手当に少子化を抑制する効果はあるのか?

→明らかしないまま手当支給すると税金のムダになるかも

経験と規範:政治の文脈では

一般に…

  • 規範と経験は別の営為
  • 規範の前提としての経験

政治学特有の困難→戦後日本政治学

  • 現代は市民全員が政治の当事者
  • 研究者も含めて政治的意見
  • 規範と経験の混同が特に起こりやすい

戦後日本政治学

啓蒙主義的政治学

戦後日本で有力だった政治学の潮流

  • 戦前の反省を踏まえた現状批判に主眼
    • 「遅れている」日本にいかに「真の民主主義」を根付かせるか?
      • 天皇制、戦争責任、自民党一党優位、官僚優位…
    • 「真の民主主義」→西洋が想定

丸山眞男(1946)「超国家主義の論理と心理」1

  • ファシズムすらまともに持てなかった日本
    • 東京裁判「個人的には反対だったが…」
    • ニュルンベルク裁判「100%責任を取らなければらない」
  • 中性国家…個人的道徳からは自立した国家
    • 西欧は宗教戦争を経て確立
    • 日本は欠如し、国家と個人的道徳が一体化

丸山眞男 (1914-96)

アンケート

以下の主張に対してあなたは同意しますか、それとも同意しませんか。

  1. 日本には政治経済を牛耳るエリート層が存在する。
  2. 日本の政治は官僚よりも政治家が動かしている。
  3. 日本政治は欧米と比べて特殊だ。

WebClassで回答

『レヴァイアサン』

1987年、雑誌『レヴァイアサン』創刊1

  • 大嶽秀夫・村松岐夫・猪口孝らレヴァイアサン・グループ

啓蒙主義批判

  • 歴史・思想史・外国研究の片手間に評論的・印象主義的に日本政治を研究
  • 日本政治を特殊日本的枠組みで解釈しようとする鎖国主義的・孤立主義的傾向

レヴァイアサン63号

レヴァイアサン・グループの成果

大嶽「日本の政治経済体制は多元主義」

  • 通説「日本はエリートが支配」
  • 資料やインタビュー調査→エリート層の分散・機能的協力関係

村松「日本の政治過程は政党優位」

  • 通説としての官僚優位説
  • 官僚に対するインタビュー→政治家や政党への恐れ

猪口「日本における選挙経済循環」

  • 景気がいい時に解散総選挙→データを使って実証
  • アメリカの政治的景気循環論と同じロジック→日本特殊論の否定

政策提言の評価実践

Think-pair-share (-20分)

以下は現在の日本政治で話題になっている政策提言の実例です。

  1. 二重行政を解消するために大阪に特別区制度を導入するべきだ(大阪都構想)
  2. 人口減少が見込まれる現代では国会議員の定数を削減するべきだ
  3. 物価高に苦しむ家計を助けるために消費税を減税するべきだ
  4. 治安のために移民の受け入れを減らすべきだ

この中から1つ選び、①まずそれが前提にしている経験的主張は何かを考えてください(参考)。②次にそれぞれの経験的主張は正しいかどうか考えてみてください。

EBPMとその課題

根拠に基づく政策形成

Evidence-Based Policy Making (EBPM)

政策の企画立案をその場限りのエピソードに頼るのではなく、政策目的を明確化したうえで政策効果の測定に重要な関連を持つ情報やデータ(エビデンス)に基づくものとすること(参考

Q. 根拠に基づいた政策を立案・実施するため、政治は専門家に任せるべきであるという主張に賛成しますか、それとも反対しますか。

3つの限界

政治との関係…政治的に可能か/望ましいか

  • 根拠に基づいていても政治的な反発はありうる
    • 例:マクロ経済政策…不景気の時に積極財政、好景気の時に緊縮財政
      • 後者は難しい
  • テクノクラシー…専門家に政策を委ねる→民主主義と言えるか?

不確実性…確率的な予測ができない事象

  • 過去のデータから「1億円分の追加の政府支出がGDP成長率を1%伸ばした」かはわかる
  • 来年度の予算が何%のGDP成長率をもたらすかは不明

自己言及性…予測それ自体が社会に影響

  • 株価が上がるという予測→実際に上がる
  • バンドワゴン効果…勝つと見込まれる候補者に票が集まる

まとめ

本日の目的と到達目標

目的

これまで扱ってきた経験的議論の方法論が、実際の政治に関する規範的議論とどのような関係にあるのかを考える。戦後日本政治学の潮流を概観した後、具体的な政策提言について実証的な根拠の面から検討し、その効用と限界を理解する。

到達目標

  1. 経験的議論が規範的議論の前提になっているということを説明できる。
  2. 戦後政治学における啓蒙主義的な立場とレヴァイアサングループの間の論争を説明できる。
  3. 世間に流布する政策提言の実例を実証的な面から評価することができる
  4. 根拠の基づいた政策提言(EBPM)の課題を3つ挙げることができる。

次回までに

事後学習

  • 授業資料を見直し、目標到達をセルフチェック
  • WebClass 上でのリアクションペーパー入力(金曜日まで)

事前学習

  • 今までの授業全体を見直す。
    • 改めて目標到達をセルフチェック
    • まだ理解できていないところを書き出しておく