13/ブレトン・ウッズ体制

国際政治経済I

鈴木淳平

学習院大学法学部政治学科

2026-07-13

今日の目次

  1. はじめに
  2. ブレトン・ウッズ体制の概要
  3. ブレトン・ウッズ会議
  4. ドル不足問題
  5. ニクソン・ショック
  6. まとめ

はじめに

先週のRPより

ユーロ圏では国によって物価などが異なるにも関わらず、独立した金融政策を放棄してしまっているが、問題はないのでしょうか。

財政政策の国際収支影響として財政出動→需要の喚起→国外産品の購入増→経常赤字圧力という因果関係が示されたが、財政出動→自国通貨減価→貿易黒字→経常黒字圧力という因果フローは成立しないのか疑問を抱いた。

国際金融の目標が固定相場制と独立した金融政策、自由な資本移動である理由とは?自由な資本移動と独立した金融政策は自由貿易と資本主義のためか?

本日の目的と到達目標

目的

戦後国際金融に関するブレトン・ウッズ体制とはどのようなシステムであったのか、その概要を概観する。また、ブレトン・ウッズ体制の成立から崩壊に至る歴史的な経緯を学ぶ。

到達目標

  1. 国際金融のトリレンマ論と関連付けながら、ブレトン・ウッズ体制の特徴を概観できる。
  2. ブレトン・ウッズ会議におけるケインズ=ホワイト論争を説明できる。
  3. ブレトン・ウッズ体制の当初の機能不全とその解決の過程を説明できる。
  4. 1970年代にブレトン・ウッズ体制が崩壊した理由を説明できる。

本日の授業の位置付け

ブレトン・ウッズ体制の概要

ブレトン・ウッズ体制

Bretton Woods system

USドルを基軸通貨とする固定相場制の下で国際金融の協調を目指した体制

国際通貨基金

International Monetary Fund (IMF)

国際金融協力と為替市場の安定を目的とする国連専門機関で、BW体制の実務を担当

  1. 加盟国の経済状況の監視
  2. 為替レート変更の審査
    • 近隣窮乏化策防止の観点から「基礎的不均衡」にあると認められる場合のみ
    • Cf. 調整可能固定相場制
  3. 安定化基金の運営

安定化基金 (stabilizing fund)

  • 加盟国が自国通貨で出資
    • IMFにおける議決権は出資額の比率
    • Cf. 特別引出権(Special Drawing Rights: SDR
  • 一定額までは自由に引き出し可能
  • 超過分はIMFが審査
    • コンディショナリティ(付帯条件)…多くは緊縮や経済自由化が要求

ワーク

第13回のスライドを見て、国際金融のトリレンマとはどのようなものかを確認してください。

トリレンマとBW体制

金融政策の独立固定相場制を採り、自由な資本移動を放棄

  • IMF協定第6条「加盟国は、国際資本移動の規制に必要な管理を実施することができる」
  • 旧外為法(1949)「対外取引原則禁止
    • 為替業務は許可業者の独占業務
    • 為替は大蔵省に届出・許可

ブレトン・ウッズ会議

ワーク

第5回のスライドを見て、パックス・ブリタニカ→第一次世界大戦→戦間期→世界恐慌の各段階で金本位制がどのような歴史を辿ってきたかを整理してみてください。

ブレトン・ウッズ会議

1944年7月、米国ニューハンプシャー州ブレトン・ウッズにて開催

  • 連合国45カ国が参加=枢軸国は不参加
  • IMFおよび国際復興開発銀行の設立が合意

固定相場制では一致するものの、具体的な制度設計で対立→ケインズ=ホワイト論争

  • イギリス大蔵省のジョン・メイナード・ケインズ
  • アメリカ財務省のハリー・ホワイト

開催地のマウント・ワシントンホテル

ケインズ=ホワイト論争

ケインズ案→赤字国に有利

  • 大規模な安定化基金
  • 決済通貨バンコール
  • 変更可能な固定レート

ホワイト案→黒字国に有利

  • 必要最低限の安定化基金
  • 決済通貨はアメリカドル
  • 厳格な固定相場制

ケインズ案の影響もありつつ、最終的にはホワイト案に近いシステムが採用

ドル不足問題

ドル不足問題

1945年に発足したBW体制は当初機能せず

  • 定められた固定レートが維持できない

原因=欧州諸国のドル準備不足

  • 大戦の余波による食糧・燃料・生産力不足
  • アメリカからの輸入にドル準備を消費
  • 結果、為替介入が不可能に

マーシャル・プラン

1948-52年 欧州復興開発計画

  • アメリカ国務長官ジョージ・マーシャルの提唱
    • ソ連と対抗するための戦略の一環
  • 合計136億ドル規模の援助を提供
    • 当時のアメリカのGNPの1.3%相当
    • 食糧・燃料・機械類の現物支給と資金供与

Q. マーシャル・プランはどのようにドル不足問題を解決したか?

Geroge Marshall (1880-1959)

アメリカ覇権とBW体制

BW体制の前提はアメリカの覇権

  • 世界最大のGNP→赤字への耐性
  • 潤沢な金準備→ドルに信認
    • 世界の金準備の6割
    • 金1オンス=35USドルの交換比率に信憑性
    • 各国がドルを需要し、為替も安定

ニクソン・ショック

ドル過剰問題

60年代以降のアメリカの赤字拡大

  • ベトナム戦争、福祉発展、日独の復興

主要国のドル準備が過剰蓄積→ドルの信認低下

  • アメリカの赤字→ドル安圧力
  • 主要国のドル買い介入→ドル準備増加=アメリカのドル準備減少
  • 固定レート(金1オンス=35USドル)の信憑性が低下し、さらにドル安圧力に

Think-pair-share (-10分)

アメリカは金とドルの交換を約束しています。

しかしアメリカの赤字により。海外にはドルがあふれ、各国が一斉に金との交換を求めると金が足りなくなります。

この問題を解決するためにはどのようなことをすべきだと思いますか。

ニクソン大統領就任

1969年、リチャード・ニクソン大統領就任

  • 「双子の赤字」解消のための緊縮にはリスク
    • 国内経済の悪化→政治的リスク
    • 世界経済に波及する恐れ
  • 当初は他国への責任転嫁戦略を採用
    • 日本や西独に財政出動や輸出自粛を要請
    • 西独は歴史的経緯から財政出動に抵抗

Rechard Nixon (1913-1994)

ニクソン・ショック

1971円8月15日 ニクソン・ショック

  • 10%の輸入課徴金の導入とドルと金の交換一時停止を一方的に宣言
  • 課徴金と金交換をカードにドルの切り下げを狙う
    • 固定相場制自体を放棄することは考えていなかった

スミソニアン体制とその挫折

  • 1971年12月 スミソニアン合意
    • 主要10カ国がBW体制再編に合意
    • 以下の条件で課徴金撤廃と金ドル交換再開
      • ドルの対金切り下げ(1oz=$35→$38)
      • 主要通貨の対ドル切り上げ($1=¥360→¥308)
      • 為替変動幅の拡大(±1%→±2.5%)
  • 1973年から非公式に変動相場制に移行
    • 日本は2月に田中角栄内閣下で移行決定
  • 1976年1月 ジャマイカ合意
    • 公式に変動相場制採用を承認

まとめ

本日の目的と到達目標

目的

戦後国際金融に関するブレトン・ウッズ体制とはどのようなシステムであったのか、その概要を概観する。また、ブレトン・ウッズ体制の成立から崩壊に至る歴史的な経緯を学ぶ。

到達目標

  1. 国際金融のトリレンマ論と関連付けながら、ブレトン・ウッズ体制の特徴を概観できる。
  2. ブレトン・ウッズ会議におけるケインズ=ホワイト論争を説明できる。
  3. ブレトン・ウッズ体制の当初の機能不全とその解決の過程を説明できる。
  4. 1970年代にブレトン・ウッズ体制が崩壊した理由を説明できる。

期末試験

  • 日時:7月27日(月)5時限
  • 場所:西1-109
    • いつもの教室とは違うので注意
  • 形式:
    • 選択問題(20点)…TF方式を10問
    • 計算問題(20点)…国際収支の計算(仕訳と収支計算)
    • 記述問題・基礎(30点)…概念の列挙・説明を3問
    • 記述問題・応用(30点)…理論の説明
  • 各回の到達目標をよく確認しておくこと