08/政党

政治過程論

鈴木淳平

駒澤大学法学部政治学科

2026-06-04

出席登録をお願いします

今日の目次

  1. はじめに
  2. 政党の機能
  3. 政治家と政党/社会的選択問題
  4. 政党組織論
  5. 日本の政党組織
  6. まとめ

はじめに

先週のRPより

TBD

本日の目的と到達目標

目的

政党とは何か、その目的と政治システムの中で果たす機能を概観する。組織の面から近代政党の成立に至るまでの歴史を辿るとともに、日本の自由民主党の組織上の特徴を考察する。

到達目標

  1. 政党の主要な機能を4つ列挙できる。
  2. 政治家にとっての政党の3つの存在意義を列挙できる。
  3. 政党がどのようにして「コンドルセのパラドックス」を解決するのかを説明できる。
  4. 「貴族政党」「名望家政党」「大衆政党」「包括政党」という語句を用いて、政党組織の変遷を説明できる。
  5. 日本の自由民主党の組織上の特徴を説明できる。

本日の授業の位置付け

政党の機能

復習:政治システム

質問

日本には自民党や中道改革連合、維新の会、国民民主党といった政党が存在します。

こうした政党は具体的には何をしているでしょうか?

簡単なものでもいいのでWebClassチャットに書き込んでみてください。

政党 (party/political party)

エドマンド・バークの定義

自分たちの共同の努力により、自分たちが皆同意している何らかの特定の原理の上に立ち、国民的利益を増進するために結合した人々の組織団体

Edmund Burke

(1729-97)

政党の主要機能

  1. 政策形成…社会の利益を表出・変換し、政策へ
    • 表出…社会のさまざまな利益を政府に伝達(=入力)
    • 集約…多様な利益をまとめ、対立を調停(=変換)
  2. 政治的リクルートメント…選挙の候補者を探索・擁立・支援
    • 政党主導、予備選挙、公募、後継指名…
  3. 指導者の選抜と政府の形成
    • 大統領・首相・大臣になりうる人材の選抜・養成
    • 与党として行政府を組織したり、議会に役職者を提供
    • 野党として代替案の提示
  4. 政治的社会化…有権者の政治知識を与え、参加を促進

Q. 先ほどの政党の仕事は4機能のうちどれ?(WebClassチャット

政党と多数決のパラドックス

政治家と政党

ジョン・オールドリッチ「政党は政治家たちによる内生的制度 (endogenous institution)である」

  • 政治家たちが直面する問題の解決手段

政治家にとっての存在意義:

  1. 集合行為問題の解決
    • 政治家は自分の選挙区に利益誘導したい
    • しかし、全員やると財源が逼迫する
  2. 政治的野心の実現
    • 政治家になりたいという野心で立候補
    • しかし、競合すれば共倒れの可能性
  3. コンドルセのパラドックスの解決

クイズ

岸田・石破・高市1の3人の駒大生グループが海外旅行に行く計画を立てています。

イタリア、韓国、ケニアが目的地の候補で、それぞれ以下のような希望順位です。

第1希望 第2希望 第3希望
岸田 イタリア 韓国 ケニア
石破 韓国 ケニア イタリア
高市 ケニア イタリア 韓国

イタリアと韓国、韓国とケニア、イタリアとケニアのそれぞれ2択で多数決をしたらどちらが勝ちますか?

WebClassアンケートで回答してください。

コンドルセのパラドックス

Condorcet’s paradox

各人の選好順位が明確に存在しても、多数決では堂々巡りになってしまい決定できないこと

政党は議事方式の管理を通してこのパラドックスを解決可能

  • 多数派が結託して政党結成
  • 議事の順番を自分たちに都合よく設定

旅行先の例

第1希望 第2希望 第3希望
岸田 イタリア 韓国 ケニア
石破 韓国 ケニア イタリア
高市 ケニア イタリア 韓国

岸田・石破の連合形成

  • 2人ともケニアよりも韓国に行きたい
  • 結託し、投票ルールを予選・決戦方式に
    • 予選…イタリアとケニア→ケニアの勝利
    • 決戦…ケニアと韓国→韓国の勝利

政党組織論

政党研究

  • 政党組織論政党内部の組織・構造を考察
    • 歴史的にどのように変容してきたか
    • 各国に違いはあるか
  • 政党システム論政党同士の関係を考察
    • 政党の数、力関係、距離…
    • 詳しくは次回

アンケート

次の日本の政党のうち、一般に「組織力が強い」と言われる政党はどれだと思いますか?

  1. 自由民主党
  2. 立憲民主党
  3. 日本維新の会
  4. 日本共産党
  5. 公明党

WebClassアンケートで回答

政党組織の歴史①

貴族政党貴族と従者たちの集団(派閥)

  • 選挙導入以前(17〜18世紀)にかけて発達
  • 官職などのパトロネージ (patronage)の配分を目的
  • 例:イギリスのホイッグ党トーリー党

名望家政党…資本家や富農、知識人など名望家の主導

  • 19世紀前半の制限選挙導入後に発達
  • こちらもパトロネージの配分が主眼
  • 地方幹部会が組織上の単位
    • 名望家たる議員と選挙区民の集団→分権的政党
    • 幹部政党 (cadre party)とも

政党組織の歴史②

大衆政党 (mass party)…近代の大衆を基礎

  • 20世紀前半の普通選挙導入後に発達
  • 特徴:個人資格による加入、支部単位、集権的党官僚制
  • 例:社会主義政党→労働者階級との結合

包括政党 (catch-all party)…特定階級ではなく市民全体を取り込む

  • 戦後(特に60年代以降)に発達
  • 特徴:イデオロギー主張の現象、資金調達・利益団体接触の多様化
  • Cf. カルテル政党 (cartel party)…国家の機構の一つとなった既成政党

日本の政党組織

Think-pair-share (-10分)

日本の自由民主党は、名望家政党・大衆政党・包括政党のどの特徴を最も強く持っていると思いますか?また、それはなぜでしょうか?

  1. Think (1分)…1人で考える
  2. Pair (2-3分)…ペアで話し合う
  3. Share (2-3分)…全体に共有する(WebClassチャット

自由民主党(自民党)

Liberal Democratic Party (LDP)

1955年の保守合同により結党

  • 自由党日本民主党

結党以来ほぼ一貫して政権の座

  • 55年体制(1955-93)

保守政党(中道右派〜右派)との位置付け

自民党の特徴

包括政党…イデオロギーが不明確

  • 第二次安倍政権前後からの右傾化
  • 岸田・石破ら穏健派も内包
  • 伝統的な利益誘導志向

名望家/幹部政党…組織構造が分権的

  • 党本部の弱さ⇄派閥の存在
  • 自律性の高い議員
    • 多くは地元の名望家
    • 個人後援会⇄派閥所属
    • 都道府県連…国会・地方議員の所属単位(=幹部会)
  • 選挙制度改革による変化?

まとめ

本日の目的と到達目標

目的

政党とは何か、その目的と政治システムの中で果たす機能を概観する。組織の面から近代政党の成立に至るまでの歴史を辿るとともに、日本の自由民主党の組織上の特徴を考察する。

到達目標

  1. 政党の主要な機能を4つ列挙できる。
  2. 政治家にとっての政党の3つの存在意義を列挙できる。
  3. 政党がどのようにして「コンドルセのパラドックス」を解決するのかを説明できる。
  4. 「貴族政党」「名望家政党」「大衆政党」「包括政党」という語句を用いて、政党組織の変遷を説明できる。
  5. 日本の自由民主党の組織上の特徴を説明できる。

次回までに

事後学習

  • 授業資料を見直し、目標到達をセルフチェック
  • WebClass上でのリアクションペーパー入力(日曜日まで)

事前学習

  • 教科書(I-3〜6)を読む。