09/政党システム

政治過程論

鈴木淳平

駒澤大学法学部政治学科

2026-06-11

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今日の目次

  1. はじめに
  2. イデオロギー
  3. 政党システム
  4. 政党システムの形成
  5. 政党システムの変容
  6. まとめ

はじめに

先週のRPより (1/4)

そもそもの話になってしまいますが、政党がなければ民主主義はなりたちませんか?

社会の多様な利益をまとめ、対立を調停して政策へ変換するという役割は、現代の複雑な民主主義社会を維持するために不可欠だと感じました。

先週のRPより (2/4)

また貴族政党と名望家政党の違いがハッキリと分かれないのではと考えた。 講義ででた名望家政党、大衆政党、包括政党について日本がどれに当てはまるかという質問に対して純粋な包括政党であると思っていたが、チャットなどみんなと共有したとき名望家政党の一面もあるなと気づかされた。

先週のRPより (3/4)

コンドルセのパラドックスについて調べていますが、政党形成や議事順序の操作がなぜ解決につながるのかよく分かりません。どのような仕組みなのでしょうか。

政治家にとっての政党の存在意義の1つである、コンドルセのパラドックスの解決に興味を持った。私はこれまで多数決を公平な決定方法だと考えていたが、そこにも欠陥が存在することを学んだ。(参考

先週のRPより (4/4)

なぜ、公明党や共産党は党内の組織力が強いのですか。結成当時から強いのでしょうか。

本日の目的と到達目標

目的

政党間の相互作用の構造である政党システムについて学ぶ。政党を特徴づけるイデオロギーを学んだのち、政党システムについてのサルトーリの類型論や形成に関する凍結仮説を紹介する。さらに近年先進国における右派ポピュリズム政党の対等に見られるような現代の政党システムの変容を考察する。

到達目標

  1. イデオロギーや政党を右派・左派の一次元で捉えることの意義を説明できる。
  2. 政党システムとは何かを説明できる。
  3. サルトーリの政党システム類型論のうち、競争的システムと位置付けられる4つを列挙できる。
  4. イギリスとイタリアの事例を用いて「凍結仮説」の内容を説明できる。
  5. 戦後西側諸国における社会構造の変化が政党システムにどのような変容をもたらしたのかを説明できる。
  6. ポピュリズムの概念を説明できる。

本日の授業の位置付け

イデオロギー

アンケート

異なる政治的立場を表す時、「右派」と「左派」などといったように、対になった2つの言葉で表現することがあります。

  1. 憲法や格差是正などをめぐる主張や立場がありますが、それぞれ「右派」っぽいと思いますか?それとも「左派」っぽいと思いますか?
  2. もっとも左派的な立場を1、中道・中立を4、もっとも右派的な立場を7とすると、日本の各政党の立場はどこに当たると思いますか?

WebClassアンケートで回答してください。

イデオロギー (ideology)1

比較的守備一貫した信念や態度のまとまり

  • 例:右派…憲法改正賛成、原発賛成、夫婦別姓反対、同性婚反対
  • 相互に関係ないものが束ねられている

わかりやすい言葉・イメージ・シンボルで表現

  • 例:右派/左派、保守主義、自由主義(リベラリズム)、共産主義、社会民主主義、ファシズム、環境主義、排外主義…

共産主義

社会民主主義

ファシズム

イデオロギーの左右次元

政党や候補者は「左派」から「右派」の一次元のイデオロギー空間上に位置付け

情報ショートカットとして機能(ダウンズ)

  • 無数にある政策争点vs.人間の処理機能の限界
  • 一次元上の位置付けで候補者の争点態度を予測可能
    • 「右派」→憲法改正賛成、原発賛成、夫婦別姓反対、同性婚反対…
  • 自分と政党・候補者の距離を測ることも容易に

政党システム

政党研究と政党システム

復習:政党研究

  • 政党組織論政党内部の組織・構造を考察
  • 政党システム論政党同士の関係を考察

政党システム/政党制 (party system)

政党間の相互作用(競争協調)の構造

デュヴェルジェの類型論…政党数による分類

  • 一党制、二党制、多党制

Q. 日本と中国の政党システムは同じと言えるか?(WebClassチャット

サルトーリの類型論1

三つの基準による分類

  • 競争性
  • 政党数
  • イデオロギー距離
競争性 システム 政党数 イデオロギー距離
非競争的 一党制 1
ヘゲモニー政党制 1+α
競争的 一党優位政党制 1+α
二大政党制 2+α
穏健多党制 3〜5 小さい
分極多党制 6〜8 大きい
擬似 原子化多党制 無数

Giovanni Sartori (1924-2017)

競争的政党制

日本(55年体制:1955-93)

アメリカ(現在)

ドイツ(統一前:1949-90)

イタリア(第一共和政:1948-94)

政党システムの形成

復習クイズ

デュヴェルジェの法則によれば、小選挙区制では【a】に、比例代表制では【b】になるとされています。

aとbに入る単語の適切な組み合わせを以下から選んでください。

  1. a: 一党制、b: 多党制
  2. a: 一党制、b: 二大政党制
  3. a: 二大政党制、b: 多党制
  4. a: 多党制、b: 二大政党制

WebClass上で回答

政党システム形成の理論

デュヴェルジェの法則選挙制度が政党システムを決める

  • 小選挙区制では二大政党制に、比例代表制では多党制になる
  • 機械的効果心理的効果

凍結仮説社会構造が政党システムを決める

  • シーモア・リップセットスタイン・ロッカンの提唱

Seymour Lipset (1922-2006)

Stein Rokkan (1921-79)

凍結仮説 (Freezing Hypothesis)1

戦後の西欧の政党システムは1920年代までの社会的亀裂 (social cleavage)を反映

  • 4つの亀裂:中央vs.地方、政府vs.教会、都市vs.農村、資本vs.労働

イギリス…世俗的二大政党制

  • 早期の国家建設と政教対立解決→地域・宗教政党の不在
  • 都市化→保守党(農村)vs.自由党(都市)
  • 階級闘争→ 保守党(資本)vs.労働党

イタリア…分極多党制

  • 統一の遅れ→多数の地域政党
  • 政教対立→人民党・DC
  • 都市化→自由党・共和党
  • 階級闘争→社会党・共産党

政党システムの変容

質問

第4回にイングルハートの脱物質主義論を紹介しました。この議論によると戦後の欧米諸国はどのような社会構造の変化を経験したでしょうか。

資料を見直して整理してみましょう(2-3分)。

戦後の社会構造変化

『静かなる革命』…経済成長、産業構造変化、高学歴化…

  • イデオロギーの終焉
    • 代替案としての社会主義体制の正当性低下
    • 主要政党のカルテル政党化
  • 階級投票の減少
    • 製造業からサービス業への移行
    • 特に労働組合の弱体化
      • 左派政党のカルテル参入
  • 脱物質主義的価値観の広まり
    • 精神的な満足や生活の質、良好な環境を求める価値観
    • エリート挑戦的政治参加、新たな政治的対立
      • カルテル政党化に対する反発の側面

政治対立構造の変化

左右次元(狭義)…国家と市場の関係をめぐる対立

  • 経済介入・再分配の左派vs.市場経済・自由放任の右派

GAL/TAN次元社会文化に関する対立

  • Green-Alternative-Libertalian…環境保護や個人の自由・人権擁護、コスモポリタン的価値観
    • いわゆる「リベラル」→緑の党
  • Traditional-Authoritarian-Nationalist…伝統文化重視、権威主義的価値観、ナショナリズムや排外主義
    • いわゆる「保守」→右派ポピュリズム政党

右派ポピュリズム政党

Populist Radical Right Parties (PRRP)

ポピュリズム (populism)…社会を善良な人民と腐敗したエリートの対立として捉える考え方1

  • 中心のない (thin-centred) イデオロギー→右派・左派とも両立可能

ただし現在は右派ポピュリズム政党の台頭が著しい

  • 右派権威主義な主張:反移民、反LGBTQ、保護主義、反環境保護…
  • ポピュリズム的レトリック…「腐敗したリベラルエリート」に対する「大衆の正義・常識」
    • 欧州では特にEUが念頭
  • 例:フランス国民連合、リフォームUK、ドイツのための選択肢、トランプ共和党、参政党…

まとめ

本日の目的と到達目標

目的

政党間の相互作用の構造である政党システムについて学ぶ。政党を特徴づけるイデオロギーを学んだのち、政党システムについてのサルトーリの類型論や形成に関する凍結仮説を紹介する。さらに近年先進国における右派ポピュリズム政党の対等に見られるような現代の政党システムの変容を考察する。

到達目標

  1. イデオロギーや政党を右派・左派の一次元で捉えることの意義を説明できる。
  2. 政党システムとは何かを説明できる。
  3. サルトーリの政党システム類型論のうち、競争的システムと位置付けられる4つを列挙できる。
  4. イギリスとイタリアの事例を用いて「凍結仮説」の内容を説明できる。
  5. 戦後西側諸国における社会構造の変化が政党システムにどのような変容をもたらしたのかを説明できる。
  6. ポピュリズムの概念を説明できる。

次回までに

事後学習

  • 授業資料を見直し、目標到達をセルフチェック
  • WebClass上でのリアクションペーパー入力(日曜日まで)

事前学習

  • 参考書(中北2019: 69-112)を読む。
    • 中北浩爾(2019)『自公政権とは何か-「連立」に見る強さの正体』筑摩書房、pp.69-112
    • いつもの教科書ではないので注意