19/メディア

政治過程論

鈴木淳平

駒澤大学法学部政治学科

2026-10-08

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今日の目次

  1. はじめに
  2. メディアと強力効果論
  3. 限定効果論
  4. 課題設定とメディア
  5. ソーシャルメディア
  6. まとめ

はじめに

先週のRPより

TBD

本日の目的と到達目標

目的

課題設定過程におけるメディア、特にマスメディアの役割を考察する。政治学や関連する研究動向から、強力効果論と限定効果論という2つの対立する見方を紹介する。さらに最近の展開として、ソーシャルメディアが及ぼす影響として「エコーチェンバー」と「フィルターバブル」を学ぶ。

到達目標

  1. 強力効果論とはどのような議論かを説明できる。
  2. ラザースフェルトの研究に依拠しながら、限定効果論を説明できる。
  3. 課題設定過程においてメディアが果たす役割を説明できる。
  4. 「エコーチェンバー」「フィルターバブル」という言葉を用いてソーシャルメディアが与える影響を議論できる。

本日の授業の位置付け

メディアと強力効果論

質問

新聞やテレビなど「マスコミ」についてどう思いますか。自由に意見をチャットに書き込んでください。

メディア/マスメディア

メディア(media)

情報を記録・伝達・記録する媒体

マスメディア(mass media)

不特定多数の人々に向かって大量の情報を伝える媒体

  • 例:新聞、雑誌、ラジオ、テレビ

(マス)メディアの効果をめぐる論争

  • 強力効果論
  • 限定効果論

強力効果論

マスメディアは人々に対して強い影響を及ぼすとする説

  • 別名:「魔法の弾丸」論、「皮下注射」論
  • 1920-30年代にかけての通説

限定効果論

限定効果論

マスメディアの影響力は限定されているとする説

  • 1940-60年代に強力効果論に代わって有力
  • ラザースフェルトによるエリー調査が端緒

ワーク

ラザースフェルトのエリー調査については、実は前期第6回の授業で紹介しています。授業資料を見返して、どのような議論であったかを思い出してください。

エリー調査(1940年)

ポール・ラザースフェルドらコロンビア大学のグループがオハイオ州エリーで実施1

  • 1940年アメリカ合衆国大統領選挙
    • 民主党現職のF・ルーズヴェルトと共和党のウィルキーの対決
  • ランダムサンプリングによる大規模パネル調査の嚆矢
  • 目的:メディアが投票行動に与える影響の検証

Paul Lazarsfeld (1901-1976)

エリー調査の発見

メディアは有権者に対して直接強力な影響を与えるわけではない。

  1. 政治的先有傾向の重要性
    • 有権者の社会的属性が主に投票行動を説明(社会学モデル)
  2. 選択的接触…有権者は自分の先有傾向に沿うメディアに接触
    • 民主党支持者は民主党寄りのメディア、共和党支持者は共和党寄りのメディアに接触
  3. コミュニケーションの二段階の流れ…メディアの情報は所属集団内部にいるオピニオンリーダーを経由して受容される
    • 例:友人、家族、ご近所さん

課題設定とメディア

アンケート

ここまで強力効果論と限定効果論について学んできました。改めてどちらに説得力があると思いますか。

WebClassで回答

新しい強力効果論

マスメディアは課題設定などを通じて影響力を及ぼしている

  • 1970年代以降、限定効果論を批判する形で登場

バーナード・コーエン1曰く、

ニュースは人々の考えに影響を与えることには失敗しているかもしれないが、人々が何について考えるかに影響を与えることには驚くほど成功している。

  • 例:皇室典範改正

マコームズの研究

1968年大統領選挙でのノースカロライナ州の投票先未定有権者のとニュースの内容分析1

  • 有権者→自由回答式で重要だと思う争点を尋ねる
  • ニュース→テレビ・新聞・雑誌の誌面から内容を分類

ニュースで扱われている争点と有権者が重要だと思う争点が一致

  • 支持政党に関わらず同様の傾向

政策過程とメディア

課題設定 (agenda setting)

ある問題を政府による解決を要する重大な問題であると認識させる過程

ソーシャルメディア

質問

XやTikTokなどのSNSを政治で活用することについて、ポジティブな面とネガティブな点について考えられること/見聞きしたことをチャットに書き込んでください。

インターネットの登場

90年代にインターネットが登場・普及

当初はサイバー・ユートピア論が主流

  • 脱中央集権、国境の開放、異文化間の対話…
  • 例:アラブの春(2010-21年)

現在は「選好に基づく強化」による分極化の懸念

  • エコーチェンバー
  • フィルターバブル

メディアの性質の比較

マスメディア

少数の発信主体から多数の受け手へ大量に情報を届けることが得意

  • 「万人受け」する情報が発信される傾向

ソーシャルメディア

利用者自身も情報を発信・共有でき、情報の選択も行いやすい

  • 極端な発信主体(ニッチメディア)も存続しやすい

エコーチェンバー(echo chamber)

自分と同じ意見に囲まれて、先鋭化していく現象

  • 選択的接触…自分の先有傾向に沿うメディアに接触
  • 極端な人々がニッチメディアや同類と積極的に交流

フィルターバブル(filter bubble)

個人が選好に沿った泡に包まれ、異なった価値観を持つ人と交わらなくなる現象

まとめ

本日の目的と到達目標

目的

課題設定過程におけるメディア、特にマスメディアの役割を考察する。政治学や関連する研究動向から、強力効果論と限定効果論という2つの対立する見方を紹介する。さらに最近の展開として、ソーシャルメディアが及ぼす影響として「エコーチェンバー」と「フィルターバブル」を学ぶ。

到達目標

  1. 強力効果論とはどのような議論かを説明できる。
  2. ラザースフェルトの研究に依拠しながら、限定効果論を説明できる。
  3. 課題設定過程においてメディアが果たす役割を説明できる。
  4. 「エコーチェンバー」「フィルターバブル」という言葉を用いてソーシャルメディアが与える影響を議論できる。

次回までに

事後学習

  • 授業資料を見直し、目標到達をセルフチェック
  • WebClass上でのリアクションペーパー入力(日曜日まで)

事前学習

  • 教科書(IX-1〜3)を読む。