20/政策過程における意思決定

政治過程論

鈴木淳平

駒澤大学法学部政治学科

2026-10-22

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今日の目次

  1. はじめに
  2. 合理的意思決定
  3. 限定合理性
  4. インクリメンタリズム
  5. 組織のモデル
  6. まとめ

はじめに

先週のRPより

TBD

本日の目的と到達目標

目的

政策過程における意思決定が、必ずしも完全に合理的に行われるわけではないことを理解し、その要因と特徴を検討する。合理的意思決定を出発点として、サイモンの限定合理性、リンドブロムのインクリメンタリズム、アリソンの組織過程モデル・政府内政治モデルを通じて、政策過程における意思決定を捉える視点を学ぶ。

到達目標

  1. 4つの段階(目的の明確化・選択肢の探索・選択肢の評価・選択肢の選択)を説明できる。
  2. サイモンによる完全合理性批判と限定合理性の概念および満足化モデルを説明できる。
  3. インクリメンタリズムに基づいた意思決定の実例を説明できる。
  4. アリソンの3つのモデルを使ってキューバ危機の意思決定を説明できる。

本日の授業の位置付け

合理的意思決定

質問

私たちは「あの人は合理的だ」とか「それは合理的な行動だ」と言うことがあります。それでは「合理的」とはどのようなことでしょうか。自由に意見を書き込んでください(近くと話し合っても可)。

WebClassチャット

復習:合理的選択論

主体(アクター)は効用を最大化するべく行動すると仮定する考え方

  • 経済学における基本的な考え方
  • 例:ダウンズモデルと中位投票者理論、デュヴェルジェの法則

合理的意思決定の過程

目的の達成のために最適な行動を選択

  1. 目的の明確化…自分がやりたいことを決定
  2. 選択肢の探索…どのような選択肢があるか
  3. 選択肢の評価…それぞれの選択肢が目的にとって望ましいかどうか
  4. 選択肢の選択…目的にとって最も望ましい選択肢に決定

復習:政策過程の段階モデル

限定合理性

ハーバート・サイモンの批判

完全合理性に基づいた意思決定は現実的ではない

  • 知識の限界…それぞれの選択肢の便益/費用はわからない
  • 予測の困難…選択肢がもたらす効果はわからないし、目的自体も変化する可能性
  • 行動の範囲…選択肢全てを考えることなど不可能

Herbert Simon (1916-2001)

限定合理性

bounded rationality

人間は情報処理能力の限界の中で合意性を発揮せざるを得ない

満足化モデル (satisficing model)

  • 考えうる選択肢を一挙に考えるのではなく、逐次的に考える
  • 逐次的な探索の途上で「満足できる」選択肢が見つかったら探索を止める
  • 時間的制約などの要因により選択肢に対する要求水準は変動する

質問

自分がこれまで行ってきた意思決定で、満足化モデルに近いような経験はあるでしょうか。自由に書き込んでください。

WebClassチャット

インクリメンタリズム

クイズ

政府は毎年、来年の予算を編成する作業を行っています。もし政府が完全に合理的であるとすれば予算編成はどのようなものになるでしょうか。正しいものを以下から選びなさい。

  1. 昨年の総額に対して3%削減することを目標に予算を作る
  2. 来年行う政策を1つ1つリストアップし、それぞれ必要な費用を計算して積み上げる

WebClassで回答

意思決定のあり方

チャールズ・リンドブロムは意思決定を以下の2つに分類

合理的包括的意思決定 連続的限定的比較
目的と手段 目的は明確に、かつ手段に先立って定義 目的と手段は明確に区別されず、密接に関係
手段の評価 目的にとって最適かどうか 参加者の同意が得られるか
分析のあり方 全ての要因を考慮 限定的

インクリメンタリズム

incrementalism (増分主義、漸進主義)

現状をベースにした意思決定

  • 現在選択された案をもとにした分析と決定
  • 選択肢の範囲は現状をベースに限定
  • 問題の一挙な解決ではなく、少しずつ改善する志向

日本の予算編成過程

入札リサーチセンターより引用

組織のモデル

グレアム・アリソン『決定の本質』1

  • 組織が意思決定を行う過程のモデル化
  • キューバ・ミサイル危機を対象とした分析
  • 3つのモデル:
    • 合理的行為者モデル
    • 組織過程モデル
    • 政府内政治モデル

Graham Allison (b.1940)

合理的行為者モデル

政府を1つの合理的主体とみなす

  • 国家・政府は「個人」のように行動
  • 各選択肢の利益・費用を計算して最適な行動
  • 例:ソ連のミサイル配備→アメリカに対抗する戦略

組織過程モデル

政府を組織の連合体としてみなす

標準作業手続き (standard operating procedure: SOP)

想定される問題に対しての対応を定めた手続き

  • 例:ソ連のミサイル基地にはカモフラージュがなかった→SOPにしたがった対応

政府内政治モデル

政府を役職者同士の権力闘争の場とみなす

  • 例:キューバ危機のアメリカの対応
    • 空軍の空爆論vs.国務省の外交的解決論
    • 妥協として海上封鎖が選択

クイズ

以下の状況はそれぞれ組織過程モデルと政府内政治モデルのどちらに当てはまるでしょうか

  1. 誘拐犯の居場所を突き止めた刑事に対して、警察上層部が「うちの捜査員を行かせた方が…」と言い争っている(踊る大捜査線)
  2. 中居問題でフジテレビが定例会見を前倒しにする形で録画禁止の紙芝居記者会見を行った(参考)

WebClassで回答

まとめ

本日の目的と到達目標

目的

政策過程における意思決定が、必ずしも完全に合理的に行われるわけではないことを理解し、その要因と特徴を検討する。合理的意思決定を出発点として、サイモンの限定合理性、リンドブロムのインクリメンタリズム、アリソンの組織過程モデル・政府内政治モデルを通じて、政策過程における意思決定を捉える視点を学ぶ。

到達目標

  1. 4つの段階(目的の明確化・選択肢の探索・選択肢の評価・選択肢の選択)を説明できる。
  2. サイモンによる完全合理性批判と限定合理性の概念および満足化モデルを説明できる。
  3. インクリメンタリズムに基づいた意思決定の実例を説明できる。
  4. アリソンの3つのモデルを使ってキューバ危機の意思決定を説明できる。

次回までに

事後学習

  • 授業資料を見直し、目標到達をセルフチェック
  • WebClass上でのリアクションペーパー入力(日曜日まで)

事前学習

  • 【事前】参考書(伊藤ほか10章)を読む。